本格的な寒さが訪れるこれからの季節。冷たい空気の中、目を閉じると…組み木作家の小黒三郎さんがデポーに来店してくださったときのことを思い出します。
その日は北風が吹きつける中、たくさんの親子が糸のこを楽しんでいました。小黒三郎さんご本人が直々に講師をしてくださり、最後まで寒さに負けずご指導してくださったのがとても印象に残っています。
休憩時間にはデポーで販売している秋田杉のトラック型の曲げわっぱのお弁当箱を眺めて、何かをイメージしている様子…。トラック型の中に二つの円を見つけ、指でその円のイメージを描き、何度かうなずいていました。それから数年後、なんとトラック型の曲げわっぱに入った組み木のひな人形『銀杏びな段飾り』が完成したのでした。いくつになられても小黒三郎さんはひらめきと行動力の人。今回のコラムはそんな小黒三郎さんとの思い出話を綴ってみることにしました。
木のおもちゃ屋をはじめる準備をしていた1993年ごろ、『日本おもちゃ会議』という面白い団体を知りました。和久洋三さん、小黒三郎さん、寺内定夫さんという、日本のおもちゃのトップ3が1980年代に発足させたものでして、全国のおもちゃの「つくり手」「あそび手」「ひろめ手」の皆様が会員となって運営される組織です。文字通り、作る人、遊ぶ人、広める人といったおもちゃ好きが集まって良いおもちゃをきちんと広めていこうといった団体です。
当時は自分自身が木工作品つくりにも力を入れていたし、子どもたちとおもちゃで遊ぶのも大好きでしたし…。悩んだ末に、ショップをするのならと『ひろめ手会員』を選択。『日本おもちゃ会議』の『ひろめ手会員』となり『つくり手会員』さんのおもちゃをたくさん紹介する運びとなったのでした。
小黒三郎さんのひな人形は「眺めるだけでなく手に取って遊んでほしい」との願いが込められています。小黒さんとお食事をする際に伺ったお話ですが、幼いころ三人のお姉さんの段飾りのひな人形を手に取って遊んだそうです。もちろん見つかると叱られるので、誰にも見つからないようにこっそりと隠れて一人楽しんでいたそうです。
「子どもを祝う節句なのに、子どもが手に取って自由に遊べたり、飾れたりできるおもちゃがないのだろう」盲学校の教諭をしていたころに教具として組み木たくさん作った経験も重なり『組み木のひな人形』が誕生しました。
幼少期や青春時代のお話をされている小黒さんの目は少年そのもの。キラキラと輝いていました。
組み木販売メーカーの遊プラン設立の話をはじめ、教諭時代のできごとなど、たくさん語ってくださいました。少し話はそれますが、空襲で母親と逃げ惑ったことの辛く苦しかった話や湘南でヨットやクルーザーを走らせるリアルな石原裕次郎との楽しい思い出話など、たくさんのお話を聞かせてもらいました。
今年86歳。4年前には絵本を出版されるといったご活躍ぶり。いつまでもお元気で、子どもたちに夢を与え続けていてほしいと切に願っております。
「ひな人形をつくることはボクにとって楽しくって、そしてとても懐かしい仕事なんだよ」組み木を与えられた子どもたち、贈られたご両親、そしてつくられた方、皆さまが末永く幸せでありますように…。
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オーガニックな暮らし・木のおもちゃデポー
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